甘酒の基礎2:甘酒と祭り~日本の御神事にも深い関りがある~

私達、日本人には、地域や神社の縁日に行われる年中行事、または人生の節目などの通過儀礼の際に、祝い事や祭りを行う文化があります。今回はそんな祭りの文化の中でも特に甘酒に関するものに注目してお伝えいたします。

甘酒に関する祭りの特徴

甘酒に関する祭りは、主に農耕に関係したものが多く、春には豊作を祈り、秋には収穫の感謝をする際に、甘酒が用いられてきました。また、病を祓い人々の健康を祈る際にも見られ、栄養抜群な甘酒の『飲む点滴』としての性質も垣間見ることができます。
※調査してみると、9~12月に掛けての秋の収穫祭での甘酒使用割合が高く、実に全体のおよそ6割が該当します。
 

甘酒が祭りに用いられる理由

では何故、甘酒が祭りに用いられているのでしょうか?
 
まず甘酒は、お米を原材料とする飲み物です。そして、米(稲)は天照大御神(あまてらすのおおみかみ)が孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が日本に降りたつ際に、地上でも育てるようにと遣わせた穀物で、日本神話と強い繋がりがあります。
その為、甘酒を始めとする御神酒(日本酒・濁酒)や餅などの米の加工品が重要な御神饌(食べ物のお供え物)として扱われています。
 
さらに、この様な神事に合わせて、甘酒を頂き飲むことがあります。
 
これは、『神人共食(しんじんきょうしょく)』という日本の文化から来ています。『神人共食』とは、人と神様が共に同じものを食べ、人は神様からのご加護を頂き、神様は人からの信仰を得る事を目的として行われ、この儀式を『直会(なおらい)』と言います。
この様な背景から、祭の為に甘酒を造り、神前に供えて、場合によっては甘酒を儀式に盛大に用い、地域の人たちで分かち合うことが行われているのです。
 

甘酒を用いた祭りの歴史

そんな甘酒を用いた祭りの歴史は、古いものから比較的新しいものと様々で、1000年以上も前から続いているものや、近年、濁酒から甘酒に転じたものなどが存在しています。
 
ここで日本書記(西暦700年の歴史書)に記載されている神話をご紹介いたします。
瓊瓊杵尊の妻である木花咲耶姫が、収穫した米から天甜酒と飯を造り、神々に献上し、収穫祭を執り行ったことが書かれています。この天甜酒は、古代の甘酒のルーツであるとも言われており、もし甘酒であったならば、日本で一番古い甘酒を用いた祭りの記録であると言えるでしょう。
 
つまり、甘酒は古代から我々の祖先が育んできた1300年以上の歴史があるだけでなく、日本の八百万の神々にとっても由縁のある日本を代表するお米の発酵飲料なのです。